不動産を売却して利益が出た場合、譲渡所得税が課税されます。ですが、「3,000万円の特別控除」や「相続の取得費加算」などの制度を使えば、大幅に節税できることも。この記事では、不動産売却時に活用できる主な控除制度をわかりやすく整理し、対象となる条件や注意点を解説します。税金で損しないための知識を、売却前にしっかり身につけておきましょう。
不動産売却で使える控除制度3選とは?
不動産を売却して利益(譲渡所得)が出ると、所得税・住民税が課税されます。ですが、税法上の「控除制度」を正しく活用すれば、納める税金を大幅に減らすことができます。ここでは、不動産売却で代表的に使われている3つの控除制度を紹介します。
3,000万円の特別控除
最もよく知られているのが「3,000万円特別控除」です。これは、マイホーム(居住用財産)を売却したときに、譲渡所得から最大3,000万円まで控除できる制度です。たとえば、譲渡益が2,800万円だった場合、全額が非課税になります。この制度は、住み替えや相続空き家の売却でも使えるケースがあるため、多くの人にとって非常に有効です。
取得費加算の特例
これは、相続税を支払った相続人が、その税金の一部を「取得費」に加えることができる制度です。これによって、譲渡所得を減らすことができ、結果として税額も下がります。特に、相続から3年以内の売却では適用が可能であり、相続税を納めている人は必ず確認すべき制度です。
買換え・交換の特例制度
マイホームの売却後、一定の要件を満たす物件に住み替える場合に使えるのが「買換え特例」や「交換の特例」です。この制度を使うと、本来課税される譲渡益の課税を将来に繰り延べることが可能になります。税金を後回しにできることで、資金繰りや資産計画の柔軟性が生まれるのが大きなメリットです。
これらの制度はどれも、条件を満たせば非常に有利に働きます。次章では、それぞれの制度の詳細と注意点をさらに詳しく解説していきます。
3,000万円特別控除の条件と注意点

「3,000万円の特別控除」は、不動産売却時に最も多く利用されている節税制度の一つです。うまく活用すれば、譲渡所得がゼロになり税金がまったく発生しないケースもあります。ただし、適用にはいくつかの条件があり、注意点も存在します。
計算イメージ
たとえば、売却益が3,500万円の場合:
譲渡所得 3,500万円 − 控除 3,000万円 = 課税対象額 500万円
このように大きな節税が可能になります。
適用対象になる不動産の要件
以下の条件をすべて満たす必要があります。
- 売却した不動産が居住用(マイホーム)であること
- 売主自身または家族が住んでいた実績があること(空き家も一定要件で可)
- 譲渡の相手が配偶者・親子など特別な関係者ではないこと
- 過去2年以内に同様の特別控除を使っていないこと
一見クリアできそうな条件ですが、事前確認は必須です。
一部貸出中の自宅・空き家でも使える?
- 自宅の一部を事業用や賃貸用にしていた場合、その部分は控除対象外になります。
- 空き家の売却でも、直前まで居住していた実績や相続空き家特例の要件を満たすことが必要です。
つまり、「マイホームだったから全部に使える」とは限らないのが注意点です。
適用を受ける際の確定申告手順
この控除を使うためには、売却の翌年に確定申告を行うことが必須条件です。必要な書類は以下の通りです。
- 売買契約書(売却・購入時)
- 登記簿謄本
- 居住実績が確認できる書類(住民票など)
- 必要に応じて、税務署指定の添付書類
また、適用ミスや不要な申告漏れを防ぐためにも、税理士との事前相談をおすすめします。
相続不動産に適用できる取得費加算の特例とは?
相続した不動産を売却するときは、「取得費加算の特例」を活用することで譲渡所得を減らし、結果的に納める税金を抑えることが可能です。この制度は「相続税を納めた人」にだけ適用されるもので、使い方を誤ると控除を受けられなくなるため注意が必要です。
相続税と譲渡所得の関係
不動産を相続した場合、その不動産には相続税が課されます。そして後日、その不動産を売却すると、譲渡所得に対しても課税が発生します。二重課税に見えるこの構造に対して、「取得費に相続税の一部を加算できる」のがこの特例です。結果的に譲渡所得が減るため、納税額も少なくなります。
取得費に加算できる金額の目安
相続税全体の中でも、対象となる不動産に対応する部分だけを取得費に加算できます。たとえば、相続税が1,200万円で、そのうち売却不動産にかかる割合が30%の場合:
取得費加算分 = 1,200万円 × 30% = 360万円
この360万円分が取得費に上乗せされ、譲渡所得を圧縮できます。
「相続から3年以内」ルールの落とし穴
この特例が使えるのは、相続開始日の翌日から数えて、相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに譲渡した場合に限られます。
たとえば2021年6月1日に相続が発生した場合、申告期限は2022年4月1日となるため、2021年6月2日から2025年4月1日までの間に売却すれば、この特例の対象となります。
相続不動産の売却は、制度の適用期限を過ぎると節税効果が得られなくなるため、売却時期の計画が非常に重要です。
節税効果の具体例と計算式
仮に譲渡所得が800万円、取得費加算により300万円が控除できると:
課税対象額 = 800万円 − 300万円 = 500万円
さらにここから基礎控除や特別控除を組み合わせれば、実際の課税額を数十万円単位で減らせる可能性があります。
買換え・交換特例で譲渡税を繰り延べる方法
不動産を売却して住み替えをする場合、「買換え特例」や「交換の特例」を活用することで、売却益に対する課税を将来に繰り延べることが可能です。これは“納税を待ってもらえる制度”であり、資金計画や節税に有効です。
どんな場合に使えるのか
この特例は、一定の条件を満たした「居住用財産の買換え」または「交換」で適用可能です。たとえば、自宅を売却して新たに自宅を購入・建築するようなケースです。売却に伴って利益が出ていても、一定の時期内に新たな居住用財産を取得すれば、課税を後回しにできます。
適用できる物件と条件(居住用・事業用)

以下の条件を満たす必要があります。
- 譲渡する資産・取得する資産ともに「居住用財産」であること
- 売却価格が1億円以下
- 売却の前年1月1日から翌年12月31日までの間に新居を取得
- 建物と土地の両方を買い替える場合など、用途や面積基準の適合が必要
事業用不動産に対する「交換の特例」も存在しますが、さらに細かい規定があります。
3,000万円特別控除との併用は可能?
結論から言うと、3,000万円特別控除と買換え特例は原則として併用不可です。どちらかを選択する必要があり、「今すぐ納税してもいいから非課税にしたい」なら3,000万円控除、「納税は後でいいから将来に利益を移したい」なら買換え特例という基準で選ぶことが一般的です。
利用時のメリット・デメリット比較
メリット
- 大きな譲渡益があっても納税を一時的に回避できる
- 資金繰りに余裕を持たせられる
デメリット
- 新たな物件売却時に繰り延べた税がまとめて発生
- 書類の準備や適用条件が複雑
この特例を使う際には、将来の売却・相続も視野に入れて選択することが重要です。
控除制度を活用するための申告手続きと必要書類
不動産売却時に控除制度を利用するためには、適切なタイミングでの確定申告と、必要書類の準備が不可欠です。「知らなかった」では済まされない手続き上のルールがあるため、早めの確認と段取りが成功の鍵となります。
確定申告が必要なケースとは?
次のようなケースでは、控除を受けるために必ず確定申告が必要です。
- 3,000万円特別控除を受けたい場合
- 取得費加算の特例を使いたい場合
- 売却によって譲渡益が出た場合
- 特例の適用を受けて課税額を抑えたい場合
「課税されないから申告しなくていい」と勘違いされがちですが、控除を使いたいなら申告は必須です。
控除適用に必要な書類一覧
控除を受けるために提出が必要な主な書類は次の通りです。
- 不動産の売買契約書(売却時・取得時)
- 登記簿謄本(全部事項証明書)
- 住民票(居住の証明用)
- 譲渡費用・取得費の明細
- 相続税の申告書一式(取得費加算用)
- 各種控除に対応した明細書や届出書(税務署提出用)
売却前から順次揃えておくことで、申告時の手間を大幅に減らせます。
不動産会社や税理士と連携すべき理由
控除制度は税制改正の影響を受けやすく、適用条件の解釈を間違えると大きな損失につながります。そのため、不動産会社・税理士など、各分野の専門家と連携することで次のようなメリットが得られます。
- 節税効果を最大限に活かせる提案が受けられる
- 書類不備や提出遅れによる控除漏れを防げる
- トラブル回避や税務署対応も安心
特に相続や複数名義など複雑な事例では、税理士の関与が控除活用の成否を分けることもあります。
税務署では教えてくれない落とし穴
税務署は申告手続きの方法は教えてくれますが、「節税のアドバイス」や「他の制度との比較」はしてくれません。また、自己判断で申告し控除を受け損ねたとしても、責任はすべて納税者側にあります。
だからこそ、「税理士に相談しておく」という選択が将来的なリスク回避につながるのです。
まとめ
不動産を売却する際に活用できる控除制度には、「3,000万円特別控除」「取得費加算の特例」「買換え特例」などがあります。これらを正しく理解し、適用できるかどうかを事前に確認しておくことで、数十万〜数百万円単位の節税が可能になることもあります。
ただし、制度ごとに適用条件や申告手続きが異なり、自己判断では見落としや誤適用のリスクもあります。売却後に後悔しないためには、税理士や不動産会社と早めに連携を取り、準備を進めることが重要です。正しい知識と専門家のサポートで、納得のいく売却と節税を実現しましょう。
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